桐野 夏生「柔らかな頬」

2007年11月 1日 [映画・ドラマ・本]

結構前に平積みされていて気になっていたので読んでみました。

ダブル不倫をしていた主人公カスミは家族ぐるみで付き合いのある
浮気相手の別荘に家族で訪れることになる。
皮肉にも故郷北海道を捨てたカスミが、その北海道で自分の娘を
神隠しにあったように失ってしまう。
罪悪感と喪失感。自分が求めていたものは何なのか、
答えを探すため、そして失った時間を求めてカスミは娘を探し続ける。

・・・

色んなレビューや解説を読むと、どうやらこれは報われない話らしい。
でも私はそれほど報われていないとは思わなかった。
(もちろん子供がいなくなったのは報われてないけど)
真実は人を傷つける。
それでも真実を知りたいのは自分に区切りをつけたいからだ。
しかし、真実を知る過程で人は傷つき、自分を知り、変化していく。

人は理解していたつもりで実は誰のことも理解出来ない。
自分の夫や子供、友人、親、愛した人。全てだ。
それを感じた時、相手と自分の壁を知るのだろう。

・・・

面白くて想像力を掻き立てられました。
読んだ後もずっと考えてしまう、そんな余韻のある作品です。

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